2013年01月29日

「猫鳴り」



「猫鳴り」/沼田まほかる 著
 
 
 
一部・二部・三部と猫の「モン」がストーリーを繋げます。
 
 
猫の話というより猫にまつわる人々の話かな?くらいに思って読んでたら・・。
 
第三部が、いけません・・・。
 
妻に先立たれた老人・藤治が老猫のモンの最期を看取るのですが・・。
 
駄目だ。 
 
涙が止まらない・・・。
 
愛猫との別れを思い出すとか、そういうのではなくて・・・。
 
ただただ、モンの最期と藤治の姿に涙が止まらないのです。
 
もう一度読み返そうかとページを捲れば、すぐに顔が歪んできます。
 
モンは立派に逝きました。
 
 
こう書くと、ほのぼのとした猫と老人の話みたいだけど、それは違います。
 
好きでもない猫を飼う羽目になった妻・伸枝。
 
生きるのが下手な大人と子供。
 
生きている事と死んでいく事。
 
ささやかに穏やかに、少し捻じれたりして生きてる事。
 
 
 
一部・二部・三部、どれも良いお話です。
 
沼田まほかるさんに嵌まりそうです。

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2013年01月22日

「バイバイ、ブラックバード」



「バイバイ、ブラックバード」/伊坂幸太郎 著
 
 
伊坂幸太郎の小説は文句なく好きだという方は沢山いると思う。
 
私もその1人!
 
苦境に陥っても悲壮感がない。
 
この世界って、人って・・はいそうですねと納得させてくれる。
 
人を愛しく思わせてくれる本。
 
そして、勇気!
 
 
これは星野一彦が5人の女に別れを告げに行く物語。
 
傍らには見張り役の巨漢の繭美。星野は支払い不能の借金のため、
 
このあと <あるバス> に乗ってどこか知らない所へ連れてかれるのだ。
 
 
いわゆる5股なんだけど、下世話な話ではない。
 
だって伊坂幸太郎だもの。
 
星野もオンナたちも普通の人間で、日々誠実に生きている。
 
 
人は責任感という看板を表に出して毎日生きているわけではない。
 
それじゃ重過ぎる。
 
けれど、無意識の責任感はみんな持っている。
 
それが人と人との世界だから。
 
どんな時でも自分のお尻を自分でキレイに拭ける人。
 
たとえそれで、どんな状況に陥ろうとも・・・。
 
そんな人々を伊坂幸太郎は描いてくれる。
 
潔いのだ。
 
この爽快感。
 
 
そして・・・伊坂幸太郎は登場人物の誰の味方もしない。
 
けれど、誰をも愛している。
 
やっぱり『愛』に行き着いてしまった。


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2013年01月15日

「アリスBトクラスの自伝」 


「アリスBトクラスの自伝」/ガートルート・スタイン 著
 
 
これはガートルートの自伝である。
 
20代の頃購入して読んだ。半分くらいまで・・・。
 
その後、家の本棚に収まったまま、数年前に私の本棚と本は一斉にほぼ処分。
 
この本も最後まで読まれないまま・・・。
 
だから図書館から借りて来ました。
 
 
およそ100年前、巴里には芸術家が溢れていた。
 
夢と絶望を背中合わせに。
 
なあんて・・・。そしてやっぱり読破できなかった。
 
 
自伝やエッセイってなぜか最後まで読めない・・・。
 
物語のように次から次へとページをめくれない。
 
途中でつい他の本に手をのばしてしまう。
 
そういえば『クレーの日記』も『三島由紀夫・日録』も途中から飛ばし読み。
 
期限切れで図書館に返しました。

posted by しのぶん at 11:27| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月11日

「ユリゴコロ」



「ユリゴコロ」/沼田まほかる 著
 
 
「九月が永遠に続けば」を数年前に読んだが、沼田さんの作品はそれ以来
 
読んでいなかった。この作品は高い評価を受け第5回ホラーサスペンス大賞を
 
受賞しているのだが、私には引っかかるものがこれと言ってなかったように思う。
 
 
 
さて今回の「ユリゴコロ」
 
ユリゴコロとはなんぞや?・・・・とらえどころのないコトバが漠然としたまま
 
心に沁みてくる。
 
これは哀しいスイッチだ・・・。
 
非現実的な母親の過去、出生の秘密、消えた婚約者・・・。
 
ありえない話? 罪の重さをどう考える? ホラー?
 
いや、そんなことはどうでもよい。
 
家族の物語。愛の物語。泣きました。
 
 
自分が愛を語るのは苦手だし少し恥ずかしい。
 
でも本を読んでいつも思うのは、そこに流れてる『愛』なんですよ。
 
『愛』が描かれてないと巧妙なトリックもただの数式みたいになってしまう。
 
 
この物語はかなりハードな愛の物語です。なのに暖かみがある。
 
最後に救いがあって良かった・・けど・・・・でも・・・哀しい。
 
(弟の存在も救われました。)
フィクションの世界は限りないな。

posted by しのぶん at 12:26| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする