2013年02月27日

「 炎上する君 」「 ダークルーム 」「 痺れる 」

 
「 炎上する君 」/西 加奈子 著
 
「 ダークルーム 」/近藤 史恵 著
 
「 痺れる 」/沼田 まほかる 著
 
 
たまたま図書館で借りた本が女性作家3人で、いずれも短編集だった。
 
だから、読み比べてみよう・・・なんて思ったわけじゃない。
 
 
 
西さんの本は初めて読みました。ほとんどタイトルに釣られて。
 
「炎上する君」ですよ。なんか、かっこいいではないですか。
 
 
容姿にコンプレックスを持った女2人<梨田と浜中>は女を捨てて

逞しく生きている。
 
2人は可笑しくも魅力的だ。その2人が噂の<足が炎上している男>に

出会った瞬間、女に変貌する。・・・恋をしたのだ。
 
その他、本当に本当に参ってしまった大人たちの短編集。
 
大人の童話?ですね。心地よかったです。
 
 
 
近藤さんの作品には日常の歪み、捻じれが描かれています。
 
読みやすくて面白い。
 
 
 
沼田さんの作品、「沼毛虫」に出てくるスミちゃんの話は辛い。
 
スミちゃんは脇役だから書かれてるのはほんの数行だ。
 
けれど私はスミちゃんのことを思うと胸が掻き毟られる。
 
集録された作品はみな面白かったけど・・・。
 
「沼毛虫」のスミちゃんが1番悲しく心に残ってしまった。
 
 
 
3人の作家をこれからもたくさん読んで行こうっと。

posted by しのぶん at 11:05| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月23日

「平成猿蟹合戦図」 

 
「平成猿蟹合戦図」/吉田 修一 著
 
 
主人公がいっぱい!
 
そして人との出会いが人生の幸運を左右する。
 
 
歌舞伎町で生きるなんとも軽〜い3人の若者の話と思いきや・・・

この若者がひき逃げ事件をネタに世界的にも有名なチェロ奏者を

脅迫するところから話は展開、いろいろな人々の物語が語られていく。
 
 
生きていれば思わぬ落とし穴があったり・・・かと思えば予期せぬ

方向へ未来が広がっていったり・・・良くも悪くも自分の力だけでは

どうにもならない事は多い。
 
そして、自分のまわりにいる人々の影響は大きい。
 
 
この登場人物たちの立場はさまざまだ。
 
痛みを噛み締めて生きてる者。
 
痛みを乗り超えて生きてる者。
 
能天気に見える若者たちをスパイスにして、揉みあい絡み合い

料理されたこの作品は良い味でした。
 
 
 
たぶん人生はつじつまがあうようになっている・・・そこに少し夢や希望が

加われば幸福な人生と言えるのではないか・・・。
 
 
 
息子を東京へ送り出した母親(今はおばあちゃん)が、駅からの帰り道、

初めて美容室へ入りパーマをかけるくだりが好きだったな。


posted by しのぶん at 17:36| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月22日

「 は ぶ ら し 」 



「 は ぶ ら し 」/近藤 史恵 著
 
 
 
脚本家の鈴音は36歳。一人暮らし。仕事も順調。
 
ある日、鈴音の部屋に高校時代の友だち水絵が8歳の子供を連れて居候。
 
1週間の約束が引き延ばされ、鈴音の生活は掻き乱されていく・・・。
 
 
水絵と最後にあったのは10年ほど前。親友と呼べる間柄ではない。
 
しかも水絵には高校生の頃から盗癖があった。
 
 
水絵は1日目の夜に鈴音から未使用の<はぶらし>を借りる。
 
翌日新しい<はぶらし>を買って返すのだが、返したのは
なんと使った<はぶらし>の方!
 
タイトルは<はぶらし>・・・成る程このエピソードに物語は
集約されているようだ。
 
 
 
そういえば・・・。
 
昔、私の友達が地方の仕事先で中学生男子と仲良しになった。

その彼が東京に遊びに来るので、私の家に彼を泊めてくれないかと
頼まれた事がある。
 
私の家は友達の家より少し広かったから・・・。
 
私は断った。
 
友達は信頼してたけど、私は知らない子供と3日間暮らす事に苦痛を感じた。
 
たった3日間なのに!
 
私は優しくない。私は冷たい。なんだろう・・この罪悪感・・・。
 
と勝手に落ち込んだりもした。
 
この小説を読んで、そんなことを思い出しました。
 
 
仲良しの友達が家に泊まるのは大歓迎なんだけどな・・・!


posted by しのぶん at 17:55| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月14日

「彼女がその名を知らない鳥たち」 



彼女その名を知らない鳥たち」/沼田まほかる 著
 
 
 
また読んじゃいました。沼田まほかるさん。
 
これは破滅の『愛』の物語。
 
 
疎ましい男、陣治。
 
下劣、貧相、卑屈、種なし小男の陣治。
 
嫌悪しならも陣治と暮らす15歳年下の十和子。
 
別れた男忘れられない十和子。
 
何もしない十和子。1日中家に居る無気力の十和子。
 
十和子に罵倒されても媚びる陣治。
 
十和子に尽くす陣治。
 
十和子を監視する陣治。
 
陣治の十和子への愛は変質的で、これでもかというくらい醜い。
 
 
昔のドラマ「101回目のプロポーズ」で武田鉄也さん「僕は死にましぇ〜ん」
 
と叫ぶ感動の名シーンあったけど・・・。
 
だからってこんな男を誰でも好きになれる訳じゃない。・・よね?
 
(あ、ちょっと私、上から目線。嫌な女の戯言と思ってください。)
 
 
 
自堕落な十和子にも嫌悪感を抱くし、こんな歪んだ男女の物語を
 
なんで私は読んでいるのだ?
 
もの凄くヘビィーで読んでいて苦しい〜。
 
 
 
ところ・・・・・。
 
ああ、また泣いてしまった。
 
陣治の『愛』に。
 
たったひとりの十和子の恋人。
 
陣治・・・こんな風に決着つけて・・・。
 
これ陣治の幸せ?
 
でも・・こんなのイヤダ。悲しすぎる・・・。
 
 
 
   余談です、もし映像化するならば私の大好きな名優・不破万作さんに
 
   <陣治>を演じてもらいたい。


posted by しのぶん at 16:08| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月10日

「わたしを離さないで」 



「わたしを離さないで」/カズオ・イシグロ 著
 
 
(注)    内容にふれています。
 
 
 
1999年、ソニーが小犬型のペットロボット・AIBOを発売した時、
 
これってどうなの? これ、かわいい? 犬?  違うんじゃない? なんて
 
思ったけど・・・それから数年後、京都の高島屋でアイボを見た。
 
本物を見るのは初めて。
 
なんと言うか・・・かわいい。・・・そう、可愛いのだ、アイボ!
 
アイボの動きは愛らしく健気で・・・。
 
でも・・・その分だけ哀しかった。
 
 
この物語を読んだらアイボを思い出した。
 
でもこの物語はロボットの話ではない。
 
もっと複雑で残酷。
 
 
 
施設ヘールシャムで生まれ育った子供達は、そこで教育を受け
 
健やかに成長し、やがて<臓器提供者>とその<介護人>になる。
 
読み進んでいくうちに、これはクローン人間の物語である事が解かる。
 
彼らはその使命を背負い、短い人生を受け入れ、この世を去っていくのだ。
 
 
 
クローン人間なんてきっと近い将来、夢ではなくなるんだろうな・・・。
 
夢のうちなら例えば・・・優秀な知能を持った人間のクローンを作り、医学の進歩、
 
科学の発展、宇宙への夢を100年縮めたり・・・とか?
 
クローン人間の人間性を無視した考えは限りない。
 
そしてこれは人間のエゴ。
 
これが人類の進化であれば、やがて世界はクローンで淘汰される。
 
決してあってはならないこと。
 
 
 
この物語は決してあってはならないことを、ごく普通に描いている。
 
クローンたちの日常も感受性も・・・。
 
ただ1つ違うのは、彼らには使命があるということ。
 
 
心にずっしりと来る作品です。
 
posted by しのぶん at 21:54| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする