2013年05月16日

「色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年」 

 
「色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年」/村上 春樹 著   
 
                             
 
 
 
<大学二年生の七月から、翌年の一月にかけて、田崎つくるは
 
ほとんど死ぬことだけを考えて生きてきた。>
 
物語はここから始まる。
 
そして十六年後、三十六歳になった現在のつくるの過去への旅。
 
 
田崎つくるくんは限りなく 『よいこ』 だ。・・・と思う。
 
色彩を持たない・・・「僕には個性みたいなものはなかった」
 
と言うつくるくん。
 
けれど 「やさしくてクールで、ハンサムだった」 というクロ。
 
 
無欲な人間は品がある。・・・と思う。
 
魅力とは別のものだ。
 
まったく無欲の人間はいないと思うけど、つくるくんは最低限の
 
欲求の中で生きていた。
 
いや?そういうのとも違うのかな・・・。
 
おとなしいのだ、彼は。
 
そして、静かに強い。
 
結局、つくるくんは強い心を持った人なのだ。
 
 
 
泥臭さのないスマートで頭の良い人々の、感性の高い話って、
 
みんな読んで酔って、気持ち良くなっちゃうのかな。
 
ビンテージのワインを買うより安上がりだね。
 
でもビンテージ・ワインだからって万人が全て美味しいと感じる訳じゃない。
 
美味しそうな振りするのはどうなんだろう。
 
 
 
 
ラザール・ベルマンの演奏するリストの『巡礼の年』が物語りのBGM。
 
どんな音楽なのだろう?
 
この本も売れてるけど、この曲のCDも売れそう。
 
・・・と物語に相応しくない俗な考えが浮かぶ。
 
 
 
 
この星には数十億の思考する個体が乗っかっているのだね。
 
重い・・・。 
 
そして・・・自分の色は他者が勝手に塗りたくる。
 
 
 
灰田よ、いずこ。
 
 
 
 
 
 
灰田はいずこ。


posted by しのぶん at 12:36| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする