2013年11月27日

「桜庭一樹 短編集」


「桜庭一樹 短編集」/桜庭 一樹著
 
 
 
それきり会っていない人。 あの子は今どうしているだろう・・・。
 
そんな人って誰にでもいるんじゃないかな?
 
 
全六編の中 「 モコ&猫 」 「 赤い犬花 」 はそんなお話で、なんとなく
 
ノスタルジックな気持ちになりました。
 
 
 
子供の頃、近所におまわりさんの子供がいた。
 
転勤してきた一家だったのだと思う。
 
地元の家族ではなかった。
 
だから少し距離感があったように思う。
 
でも、子供たちには関係ない。
 
二人姉妹で、めぐみちゃんは私より二つ上、のぶこちゃんは私より

二つくらい下。
 
めぐみちゃんは物静かなお姉さんで、のぶこちゃんは泣き虫だった。
 
裏の川原の土手で、よく、のぶこちゃんを置き去りにして逃げた。
 
のぶこちゃんは泣きながら 「待ってえ〜」と言って追いかけてきたが

追いつかない。
 

それが楽しかった。 
 
子供は残酷だ。
 
その時、吹いていた風の匂いを覚えている。
 
私が小学校にあがる頃、家族は引っ越して行った。
 
それきりだ・・・。
 
 
それきりの人は案外いる。
 
最近、それきりになってた大学時代の友達と30年振りに会った。
 
それきりだった彼は立派なおじさんになっていた。
 
それきりの人がひとり減った。
 
 
それきりの人にとっても、私がそれきりの人なんだよね・・・。


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2013年11月18日

「黒い福音」



「黒い福音」/松本 清張著
 


 
花村萬月の小説「百萬遍」の惟朔や 「ゲルマニウムの夜」の朧が
 
暮らしていたという修道院・サレジオ会が舞台の物語です。
 
 
昭和34年に実際に起こったスチュワーデス殺人事件をもとにした推理小説。
 
 
この頃の日本はまだまだ国際的な立場が弱かった。
 
   <日本人は今でも外人( 白人 ) に弱い>
 
そしてキリスト教団の閉鎖的権威主義。
 
実際、犯人と思われる外人神父はベルギーに帰国。
 
警視庁は手も足も出ず。
 
逃げられた。
 
未解決事件。
 
 
 
疑問を持った作家・松本氏は綿密な取材を重ねたらしく実録手記のような
 
感じで、感情的表現が少なく、淡々と物語りは進みます。
 
救援物資の横流し、麻薬の密輸。
 
宗教の名のもとに、神の名のもとに・・・修道院は都合の良い隠れ蓑になった。
 
どす黒い空気が充満してる小説です。
 
なぜスチュワーデスは殺されたのか?
 
なぜ殺されたのがスチュワーデスだったのか?
 
 
宗教団体に限らず団体・集団というものは時に素晴らしい力を発揮したりも

するが時に恐ろしい負の塊にもなる。
 
 
 
この殺人事件、54年前のことではありますが、私の住む近場で

起きてるんですよ。
 
 
この逃げたベルメルシュ神父は、あれから54年たった今も何処かで、

黒衣を身に纏い生きているのでしょうか?
 
 
それとも、とっくに・・・?



posted by しのぶん at 11:19| Comment(2) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月12日

「 百万遍 流転旋転 」上・下巻


「 百万遍 流転旋転 」 上・下巻/花村 萬月著
 
 
 
時代は昭和48年。惟朔18歳。
 
百萬遍のこれは5巻6巻め。
 
分厚い全6冊に惟朔15歳からの3年間が描かれているわけだ。
 
たった3年だよ。
 
 
当初、私は惟朔が良くも悪くも成長していく姿を想像し、時は流れ・・・
 
惟朔が大人になって・・・例えば30歳くらい?になっていたりとか? と
 
思っていたわけだが 、その期待は虚しく、読んでも読んでも時間は流れず
 
惟朔は15歳から18歳まで概ねずうっとSEXばかりしていた・・・。
 
 
それでも私は読み続け、読み終えた今・・・この続きがまだ読みたい。
 
 
惟朔は覚せい剤にも手を出す。
 
今の時代ではとんでもない話なのだが、昭和48年、それよりちょっと昔を

振り返れば高度成長期、労働者はこれを使い働きづめた時代もあった

訳で・・・。
 
だが、身体に悪いものは悪いのだ!
 
惟朔は、かげんを知っている。 だから、壊れたりはしない。
 
まったく、だからといって、こっちはヒヤヒヤだ。
 
惟朔にはボロボロになってほしくないのだ。
 
まだ18歳だぞ。
 
いい女とばかり付き合って、やっと落ち着いてくれるかと思えば別れて。
 
いい女といったって、みんな二十歳にもなっていない少女じゃないか。
 
これがまあみんな惟朔に惚れて、つくすのなんのって。
 
幸せなのか不幸せなのか・・・・・・解からん。 が、羨ましくもある。
 
早熟な未成年たち。 ひと足早く大人になった小娘たち。
 
一生懸命で危なっかしくて・・・。
 
 
 ・・・なんだかオバサンの小言みたいになって来た・・・。
 
 
 
物語に描かれている若者も大人たちも、その生き様は生半可ではない。
 
どうしようもなく、くたばりそうな男にさえも生命力を感じるのだ。
 
 
 
因みに昭和48年は。
 
 「あしたのジョー」が真っ白に燃えつきた。 当時、読み終えた私は・・・
 
私はしばらく何も出来なかった。
 
ジョーが真っ白な灰になった最後の1ページは不滅です。
 
中学生の私の愛読書は少年マガジンと少年ジャンプでした。

 
 
瀬戸内晴美さんが得度された。 <寂聴>という法名を授かった。
 
 
中央線に初めてシルバーシートができた。
 
 
 
昭和49年。そして惟朔は東京へ。
 
続きはありますよね。  花村さん。  お願いしますね。 


posted by しのぶん at 11:24| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月06日

「なで肩の狐」・「狼の領分」


「なで肩の狐」  「狼の領分」 /花村 萬月著
 
 
 
これは、エンターテーメントな小説。 
 
「百萬遍」の惟朔に翻弄された私としては、ブレイクタイムにちょうど良し。
 
たいへん読みやすく面白い。
 
「 なで肩の狐 」 を読んだらその続編もあるということで、それが
 
「 狼の領分 」 です。
 
 
 
別に・・・花村萬月に嵌まっているわけではない。
 
ただほかの作品も読んでみたいと思うわけで・・・嵌まってるわけでは・・・ない。
 
 
物語は元・凄腕ヤクザの<木常>とその相棒、気弱な元・相撲取りの
 
<蒼ノ海>の危ない話。
 
ヤクザから足をあらった筈の木常ではあるが、厄介な事件に巻き込まれて
 
いく。
 
 
しかし・・・そんな風に残酷に人を殺さなくても・・・。
 
え、そこで殺っちゃうのかい?
 
あっ、そういう話?  と、まごつく 私。
 
で、 やっぱりここで殺るよなあ と受け入れ態勢になっていく自分。
 
蒼ノ海が救いだなあ。
 
 
昔、読んだマタギが描かれている物語に、凄く感銘を受けた事があって、
 
「 狼の領分 」 もその辺の話が少し盛り込まれていて・・・ゾクゾクしました。
 
マタギは凄いのだ。 
 
過酷で神秘的で、人としての驕りを捨てて自然の一部として生きる。
 
死と隣り合わせで、大自然と共に生きる。 動物として生きる。
 
日々の戦い。
 
 
花村小説の舞台は、いつも負の世界の中にある。
 
そして戦いがある。 だが、情熱的なものではない。 冷めているのだ。
 
だが、とことん戦う。 それは刹那的に。 究極的に。
 
ついていけない・・・。 息切れ状態・・・。
 
 
 
 
私は、なまっちょろい!・・・だが、時代や環境のせいにするのだけはやめよう。
 
ん?  急にどうしたんだ、私・・・?
 
 
続・続編も読みたいのだが・・・。


 
posted by しのぶん at 13:02| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする