「桜庭一樹 短編集」/桜庭 一樹著
それきり会っていない人。 あの子は今どうしているだろう・・・。
そんな人って誰にでもいるんじゃないかな?
全六編の中 「 モコ&猫 」 「 赤い犬花 」 はそんなお話で、なんとなく
ノスタルジックな気持ちになりました。
子供の頃、近所におまわりさんの子供がいた。
転勤してきた一家だったのだと思う。
地元の家族ではなかった。
だから少し距離感があったように思う。
でも、子供たちには関係ない。
二人姉妹で、めぐみちゃんは私より二つ上、のぶこちゃんは私より
二つくらい下。
めぐみちゃんは物静かなお姉さんで、のぶこちゃんは泣き虫だった。
裏の川原の土手で、よく、のぶこちゃんを置き去りにして逃げた。
のぶこちゃんは泣きながら 「待ってえ〜」と言って追いかけてきたが
追いつかない。
それが楽しかった。
子供は残酷だ。
その時、吹いていた風の匂いを覚えている。
私が小学校にあがる頃、家族は引っ越して行った。
それきりだ・・・。
それきりの人は案外いる。
最近、それきりになってた大学時代の友達と30年振りに会った。
それきりだった彼は立派なおじさんになっていた。
それきりの人がひとり減った。
それきりの人にとっても、私がそれきりの人なんだよね・・・。