「バイバイ、ブラックバード」/伊坂幸太郎 著
伊坂幸太郎の小説は文句なく好きだという方は沢山いると思う。
私もその1人!
苦境に陥っても悲壮感がない。
この世界って、人って・・はいそうですねと納得させてくれる。
人を愛しく思わせてくれる本。
そして、勇気!
これは星野一彦が5人の女に別れを告げに行く物語。
傍らには見張り役の巨漢の繭美。星野は支払い不能の借金のため、
このあと <あるバス> に乗ってどこか知らない所へ連れてかれるのだ。
いわゆる5股なんだけど、下世話な話ではない。
だって伊坂幸太郎だもの。
星野もオンナたちも普通の人間で、日々誠実に生きている。
人は責任感という看板を表に出して毎日生きているわけではない。
それじゃ重過ぎる。
けれど、無意識の責任感はみんな持っている。
それが人と人との世界だから。
どんな時でも自分のお尻を自分でキレイに拭ける人。
たとえそれで、どんな状況に陥ろうとも・・・。
そんな人々を伊坂幸太郎は描いてくれる。
潔いのだ。
この爽快感。
そして・・・伊坂幸太郎は登場人物の誰の味方もしない。
けれど、誰をも愛している。
やっぱり『愛』に行き着いてしまった。