2014年07月17日

「死してなお君を」赤井三尋

「死してなお君を」赤井三尋

久々に私にとって新しい作家に手をのばしてみた。久々に読み応えのある物語だった。好きな小説だ。とは言え読破後のスッキリ感は低い。どちらかと言うと哀しい...。

昭和32年から35年。時代が作る物語。正義感の強い主人公、敷島は造船疑獄の指揮権発動に失望し検事を辞めた。その後の売春汚職を追う読売新聞社記者の立川。地検の権力闘争。検事総長の座。当時の政治家の隠された汚職。フィクションなのだが実名がポンポン出てくる。(かの神近市子衆議院議員も少しだけ出てきます。)

政府公認の赤線が廃止されたのは昭和33年。私の生まれた年だ。昭和30年、吉原の従業女性3822名の半数近くが前借金によって自由を縛られていた。そしてその斡旋は当時の役場が堂々と行っていたのだ。貧困は女性の人権を平気で奪う。我慢がならぬ。貧しい農家に生まれ娼婦として売られた夕子は、ある日敷島と出会う。娼婦と元検察官。そして敷島はある男から依頼を受け、ヤクザを追いつめ拳銃で殺害。敷島を追う刑事、南。敷島の安アパートの隣の優しい住人、田中。チンピラの拓司。娼館の立ち並ぶ片隅でおでんやを切り盛りする元娼婦の菊江。
時代に抗いながら懸命に生きる普通の人々が魅力的に描かれている。

この物語りは権力との戦いだ。権力は恐ろしく愚かだ。そしてその権力が国家を支配している。

9784062131636.jpg

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
昭和32年、売春防止法の施行により、まさに赤線の灯が消えようとしている時、東京地検をドロップアウトした元特捜検事・敷島航一は、夕子という娼婦と巡 りあう。そして、政官を巻き込んだ売春汚職、読売新聞記者の「不当逮捕」事件、検察庁内部の派閥抗争という時代の流れに、否応なく巻き込まれていく。夕子 との愛に生きようともがきながら、敷島は奈落の底に落ちていく。

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
赤井三尋(アカイミヒロ)
1955年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ニッポン放送に入社。2003年、『翳りゆく夏』で第49回江戸川乱歩賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

posted by しのぶん at 00:00| Comment(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: