2013年12月05日

「一丁目ぞめき」


 「一丁目ぞめき」/赤堀 雅秋著
 
 一丁目ぞめき
 

戯曲です。 岸田戯曲賞受賞作品です。
 
東北大震災の翌年、シャンプーハットで上演されたものですが、私は
 
残念ながら拝見してません。
 
観たかったなあ・・・。
 
 
 
普通の人々はちっとも普通じゃなくて、いや、普通じゃないのが

普通の人なのか?
 
どうしようもない生活。 どうもしようがない生活。
 
 
舞台を観たり小説を読んだりしてる時、私は時々他人の生活を

覗き見してるような感覚になる。
 
すみません・・・私が見てるから気をつけてください。
 
あまり本音を出さないでください。
 
みっともないの、私見ちゃってますよ・・・と。
 
しかし、その時点で私は作品に負けているのだ。
 
少し距離をとる事によって安心を得ようとするのだ。
 
どっぷりツカルノガ恐いのだ。
 
作者の思惑に嵌まってしまっているのだ。
 
のだ。のだ。が、多くなってしまったのだ。
 
 
私は愉快と不快の狭間を行ったり来たり。
 
 
赤堀作品は、恐い・・・。
 
好きと言えない好き。
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2013年11月27日

「桜庭一樹 短編集」


「桜庭一樹 短編集」/桜庭 一樹著
 
 
 
それきり会っていない人。 あの子は今どうしているだろう・・・。
 
そんな人って誰にでもいるんじゃないかな?
 
 
全六編の中 「 モコ&猫 」 「 赤い犬花 」 はそんなお話で、なんとなく
 
ノスタルジックな気持ちになりました。
 
 
 
子供の頃、近所におまわりさんの子供がいた。
 
転勤してきた一家だったのだと思う。
 
地元の家族ではなかった。
 
だから少し距離感があったように思う。
 
でも、子供たちには関係ない。
 
二人姉妹で、めぐみちゃんは私より二つ上、のぶこちゃんは私より

二つくらい下。
 
めぐみちゃんは物静かなお姉さんで、のぶこちゃんは泣き虫だった。
 
裏の川原の土手で、よく、のぶこちゃんを置き去りにして逃げた。
 
のぶこちゃんは泣きながら 「待ってえ〜」と言って追いかけてきたが

追いつかない。
 

それが楽しかった。 
 
子供は残酷だ。
 
その時、吹いていた風の匂いを覚えている。
 
私が小学校にあがる頃、家族は引っ越して行った。
 
それきりだ・・・。
 
 
それきりの人は案外いる。
 
最近、それきりになってた大学時代の友達と30年振りに会った。
 
それきりだった彼は立派なおじさんになっていた。
 
それきりの人がひとり減った。
 
 
それきりの人にとっても、私がそれきりの人なんだよね・・・。


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2013年11月18日

「黒い福音」



「黒い福音」/松本 清張著
 


 
花村萬月の小説「百萬遍」の惟朔や 「ゲルマニウムの夜」の朧が
 
暮らしていたという修道院・サレジオ会が舞台の物語です。
 
 
昭和34年に実際に起こったスチュワーデス殺人事件をもとにした推理小説。
 
 
この頃の日本はまだまだ国際的な立場が弱かった。
 
   <日本人は今でも外人( 白人 ) に弱い>
 
そしてキリスト教団の閉鎖的権威主義。
 
実際、犯人と思われる外人神父はベルギーに帰国。
 
警視庁は手も足も出ず。
 
逃げられた。
 
未解決事件。
 
 
 
疑問を持った作家・松本氏は綿密な取材を重ねたらしく実録手記のような
 
感じで、感情的表現が少なく、淡々と物語りは進みます。
 
救援物資の横流し、麻薬の密輸。
 
宗教の名のもとに、神の名のもとに・・・修道院は都合の良い隠れ蓑になった。
 
どす黒い空気が充満してる小説です。
 
なぜスチュワーデスは殺されたのか?
 
なぜ殺されたのがスチュワーデスだったのか?
 
 
宗教団体に限らず団体・集団というものは時に素晴らしい力を発揮したりも

するが時に恐ろしい負の塊にもなる。
 
 
 
この殺人事件、54年前のことではありますが、私の住む近場で

起きてるんですよ。
 
 
この逃げたベルメルシュ神父は、あれから54年たった今も何処かで、

黒衣を身に纏い生きているのでしょうか?
 
 
それとも、とっくに・・・?



posted by しのぶん at 11:19| Comment(2) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする